私の中で男になって
お台場にいる間中私たちはずっと手をつないでいた気がする

それは寒いからっていうだけの理由じゃなくて

特に理由はない




私も翔君もあからさまに手を握ったりはしないけど

ちょっと近くに手があると


いつの間にか重なってる



一つ一つの行動に

理由や策略はない

自分の思うままをして

それが相手も求めてくれるなんて



翔君とじゃなきゃありえないことだ







夜になって晩御飯を食べようってことになるけど

私たちはいつも必要以上に迷ってしまう

私は本当に何だっていい




初めてのデートでもないんだし、いつもキメキメな感
じでもないんだから


ラーメン屋さんだってかまわない



でも翔君はどこかそういう形みたいなものにこだわり
があるのか

それとも一応私も女の子だからって気をつかっちゃっ
てるのか

いつもパスタがメインに置いてあるような店ばっかり
になる


「だってさぁ、入ってアウェーな感じだったらやじゃ
ない?」


「そりゃあそうだけど、もっと適当なところでいいの
に」



だから店に入るまで時間がかかっていろいろ歩き回る
から

“歩きまわしてごめん”と翔君が店を決めようとする
といつもこうなる

少しくらい歩いたって大丈夫なのに

普段気の強い私にろくに女の子扱いしないくせに

こういうところで本当は気を使ってくれてるんだなっ
てわかる



翔君はかっこいいことは言えないけど

いろんなところで

翔君の思いは伝わってるよ






それでもちょっとだけかっこいいというか

大人の男っぽさを感じたのは


付き合って1週間目のときだった

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