私の中で男になって
鏡みたいにただ前方の私たちだけを映したテレビを前
にまた沈黙

話が詰まったわけでもないのに、

お互いどこか違う方に意識が飛んでるからか

よくこうやって会話が途切れる




翔君は腰にあった左手を私の体ごと自分のほうにグイ
ッとやった

バランスを失った私の体は、翔君の方に倒れかかる

そのとき翔君とギュっと抱き合った



座った状態からソファーの上で抱き合ってるから

変な筋が伸びてるのはわかったけどもちろんそんなこ
とを言っている場合じゃない



翔君は小柄で細身で頼りない体だと思ってたけど

こうやって抱き合っていると

意外と胸は広くて

抱きしめあっているときは

翔君に体を預けていた



翔君のいつものにおいがする

こんなにも翔君が近くになったことはなかった




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