私の中で男になって
一線を越えた私たち


ベッドに横たわるとあの時の景色が目に浮かんで眠れ
ない

次に会ったのはバイトの日

当たり前のように軽く挨拶をして名字で呼び合って…

翔君を見るたびにあの日のことが思い浮かんじゃっ
て…

制服を着ている翔君を見るのも恥ずかしい

あんな普通にしている翔君とあんなことをしたなんて
思いだすと…



バイト帰りになって、やっと二人になれた

いつもと同じ深夜の通りを二人で並列歩行する

ひんやりとした風が肌に触れる

バイト中は照れくさくて無意識に距離を置いてしまっ
てた翔君がこんなに近くにいる

いつもだったらバイトが終わってふらりになったとた
んに“二人だけの関係”になれるのに

どうやって接したらいいのか、今まで通りでいいとは
思うんだけどやっぱり…

「どうしたの?」

私の動きが不自然だったのか翔君は私の顔を覗き込む

「なんでもない!」


どうしていいのかわからなくなって私は少し足を速め


「なぁんだよ!」
翔君は私の後を小走りで追いかける

私の手首をつかんだ左ではそのまま私の掌に触れる

触れ合った手をからませ、自然と手を握る





翔君の手に触れ合うことでまた安心する





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