路地
目が覚めるとそこは白の世界だった。


天井も壁も何もかもが白。


これほどまでに純粋な白でありながら、これほどまでに落ち着かない空間は他にあるだろうか。


美織は束縛された手足を動かそうとすることもせず、ぼんやりとそんな事を考えた。


不意にノックの音と共に人が侵入ーーーー


そう、この白の部屋には侵入という言葉がよく似合う。


侵入してきた人物はやはり白を身に纏い、淡々と準備をすると美織の痩せ細った右腕に繊細な細さの針をブスリと刺した。


その唐突な痛みに顔をしかめながら美織はまだ痛みを感じる感覚が我が身に残っているのだなとそんな事を考えた。


「さあ、もう少し眠ると良いわ。」


白を纏った人物はそう言うと何やら手元のノートに書き込むと真っ白な空間から出ていった。


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