夜空に咲く花火の下で
「何サボってんだ」
「ヒャッ!」
突然の言葉と同時に、無防備な左頬に何か冷たくて固い感触がありバッと身体を起こした。
そんな私の慌てた姿を見てフッと口元に笑みを浮かべた林チーフは、差し入れ、と缶コーヒーを机に置いた。
さっきの冷たいものの正体は缶コーヒーだったのか。
もっと普通に渡してくれてもよかったんだけど。
「ありがとうございます」
机の上に置かれた缶コーヒーは微糖だった。
「それでよかったんだろ?」
林チーフはプシュッと無糖の缶コーヒーを開けながら言う。
「はい」
コーヒーは飲むけど無糖は苦くて飲めない。
前に間違えて無糖のコーヒーを飲んだ時、あまりにも苦くてシロップを二つ入れたのを林チーフは覚えてくれていたんだ。
こういう細かな気遣いをしてくれるのも、いいなと思う要因の一つなんだよね。
プルトップを開け、喉に流し込むとほんのりとした苦みが口の中に広がった。