夜空に咲く花火の下で
不意に聞こえた声に心臓が跳ねた。
もう、急に声をかけるのはビックリするからやめて欲しい。
「は、林チーフ……、帰ったのかと思いました」
フロアの入り口からゆっくりと歩いてくる林チーフ。
ホント、不意打ちは心臓に悪い。
「何を言ってるんだ。お前が残ってるのに先に帰る訳ないだろ」
呆れたように言う。
ですよね……、よく見ると林チーフの鞄が机の脇に置いてあるし。
「それはそうと、出来たのか?」
「はい、チェックも終わりました」
「そうか、ご苦労さん」
その言葉を聞き、パソコンの電源を落とし片付け始めた。
やっと帰れる。
バッグを手に立ち上がると、ちょうど林チーフも帰り支度をしていて、バチッと目が合った。
そして口角をゆるりとあげる。
「大島、頑張ったご褒美、やるよ」
「えっ?」
「いいから黙ってついてこい」
そう言うと林チーフはフロアを出ていく。
「あ、ちょっと待ってください」
早足に後を追った。