【短】俺とあの人~狼の恋~
夜、久しぶりに尚吾に電話をした。


『久しぶりだな。何かあった?』

「べつに…ただなんとなく掛けてみただけ」

『嘘だろ。おまえが何もないのに電話かけてくるわけない』

「ほんとになんでもないよ」

『好きな女でもできた‥?』



尚吾の質問に、俺は言葉を詰まらせた。



『あっ図星だろ~。どんな子?』

「好きっていうか…ちょっと気になるだけ。
たぶん、好きじゃないし…」

『へ~~、おまえのそんな気弱な声聞いたの初めて』

「弱い?俺のどこが弱いんだよ!」

『おまえ、自分じゃ気づいてないだろ。今、凄く不安そうな声だった。
相談できる友達いないの?』

「友達…?」



友達と呼べる名前が浮かんでこなかった。

残り数か月の高校生活に、友達なんていらないと思ってた。



『おまえのことだから、周りに壁つくってんだろ~』

「うるせー。俺は友達なんて必要ないんだよ」

『周りをよく見てみろよ‥。きっと、一番近くに友達って呼べる奴がいるからさ』

「尚吾、おまえウザイ!俺もう寝るわ」

『おう、またな!』




尚吾の奴、偉そうなこと言いやがって…。


いつからあんなこと言えるようになったんだ?




なんだか俺だけが取り残された気分だった。






< 10 / 50 >

この作品をシェア

pagetop