【短】俺とあの人~狼の恋~
「猛、野田先生が入院したらしいぞ」


隣の席の安藤が教室に戻った俺に言った。


「なんで?」

「胃潰瘍だってさ」


昨日から休んでる担任の野田先生が入院したらしい。


ずっと腹痛があったらしいけど、俺は全然気づかなかった。


気づかなかったというか…野田先生に関心がなかった。





午後の授業が終わり、帰りのホームルーム。


騒がしい教室のドアが開いた。



入って来たのは、小さくて色の白い女の先生。


少し挙動不審な歩き方が、緊張していると感じさせる。



「由紀ちゃんが担任になるの!?」


教室の男子たちが嬉しそうにはしゃぎ始めた。



「誰?」

安藤に『由紀ちゃん』という人のことを聞くと、安藤は驚いた顔で俺に言った。


「猛、知らないの?このクラスの副担任の幸田由紀先生」

「知らない」

「そっかぁ、由紀ちゃんこのクラスの科目受け持ってないしな。
由紀ちゃんかわいいだろ~」

「べつに…」




興味なかった。


男子にもてはやされ困った顔でホームルームを進めてる『由紀ちゃん』は、

確かにかわいかったけど、ただそれだけだった。





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