【短】俺とあの人~狼の恋~
放課後、ただなんとなく借りてた本を読まないまま返しに図書室に行った。


放課後の図書室は、本たちがオレンジ色に染まってる。



返却ボックスに本を入れた俺は、背伸びをしている幸田先生を見つけた。


届きそうで届かない本棚の本に、何度も背伸びして白い指先が触れていた。



俺はそのまま図書室を出ようとしたけど、

なぜか足が勝手にあの人の方へ歩いていた。




あの人の後ろに立ち、白い指が触れている本をヒョイと取った。


振り返ったあの人は、顔を真っ赤に染めた。


「あ‥ありがとう」



真っ赤な顔で俺から目を逸らし、本を受け取ったあの人の手は紅葉のように小さかった。




こんなことで顔を赤くするなんておもしろい。


俺の心をくすぐった。



「先生、なんの本読んでるの?」


別に本になんて興味なかったのに、本を覗き込んで声をかけてる俺がいた。



「え‥!?」


恥ずかしそうに本を後ろに隠したあの人の手から、俺はまたヒョイと本を取った。


「心理学?先生、心理学に興味があるの?」


「興味というか…自分のあがり症を治したくて…」



消えそうなくらい小さなあの人の声。


俺はもっとその声が聞きたくなって、わざと意地悪な質問をした。





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