【短】俺とあの人~狼の恋~
「俺…失恋した」


『‥‥‥‥失恋!?』


「ああ…」


『おまえが失恋するなんて、天と地がひっくり返ったみたいだな』



尚吾は俺が失恋したことを笑った。



俺はその笑い声に救われた。


尚吾が笑ってくれなきゃ、この先を話せなかった。

真剣に聞かれたら、俺はよけい話しづらくなるから。




「なぁ尚吾…人を好きになるってこんなに苦しいものなのか?」


『おまえ、苦しいの?』


「ああ、めちゃくちゃ苦しい。熱が50度ぐらいあるみたいに体が重い」


『猛、それは体じゃなくて心だろ?』


「‥‥心…だな」



俺の反応を聞いて尚吾がまた笑った。

そして、今まで言われたことのない厳しい言葉を俺に言った。


『よかったな。これでおまえも人を好きになるってことを知ったな‥。
おまえが今までふってきた女の子たちも、今のおまえと同じ思いをしたんだぞ』



心臓を打ち抜かれたようだった。



俺は今まで何人もの女を傷つけてきたんだ…。


付き合ってすぐに体の関係をもって別れた女や、顔も見ないでふった女もいた。




俺はなんてことをしてきたんだ…。





誰かに自分におきかえて考えるなんて生まれて初めてした。



「俺って最悪だな‥」


『今頃気づいたのかよ』


「遅いよな…」


『けどさ、卒業する前に気づけて良かったな。その女に感謝しろ』


「感謝…ね」
















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