涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。


そっと、割れ物に触れるように優しく、レイが私の手を握る。


温かいぬくもりに、胸がぎゅっとなる。



「やけんサクは、生きてや……」



レイが私を抱き寄せる。

涙が、レイのTシャツを濡らした。



「サク、ここにおっていいと……?」


「……ん」


「お母さん、サクのこと許してくれるかな……?」


「ん。サクのお母さん、サクのこと怒ってないけん。大丈夫や」



レイの言葉に、ずっと重かった心が少しずつ軽くなって行く気がした。


お母さん怒ってないと……?

サクのこと恨んでない……?


レイの身体にしがみついて、子どもみたいに大声をあげて泣いた。


私、生きてていいんやね?

笑って生きてても、いいんやね?


< 131 / 259 >

この作品をシェア

pagetop