涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。


尊いその存在に涙が止まらない。


美紀さんが10ヶ月間大切にお腹の中で育んできた命が今、こうして私たちと同じ世界を見てる。


きっと綺麗なだけではないこの世界。


これから生きて行くうえで、悲しいことも苦しいことも、きっとあるね。


だけど、希望はあるんだよ。


だから忘れないで、

こうして望まれて生まれて来たこと

君が生まれた瞬間を喜んだ人がいること

君の、未来の幸せを願っていること。


命は間違いなく、重たいんだってことをーーーー。



「咲夜ちゃんおいで」



美紀さんが私を呼ぶ。

涙をぬぐってそばに寄った。



「昨日はごめんね。…ほら見てみて。可愛いでしょう?」


「私の方がごめんなさい。イライラして、キツいこと言っちゃった」


「いいと。家族なんやから、たくさんケンカした方が絶対いいんやから」



美紀さんがにへっとチカラなく笑う。

母親は強いなって改めて思った。


隣にいる可愛い弟に笑いかけると、心の中で誓った。


……お母さん、私、生きるけんね。


天国から見ててください。



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