涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。
〈13〉しあわせなもの
「おはよー!」
そんな言葉がいきかう教室。
9月1日。今日から新学期が始まる。
久しぶりに袖を通した制服に身を包んで。
席につくと真理ちゃんが飛んで来た。
「おはよー、サクちゃん!」
「おはよう」
前髪が少し短くなった彼女はすごく可愛かった。タレ目が引き立つ。
隣の席を見ると、レイはまだ来た様子がない。
……早く会いたいのになぁ。
「さーくや、久しぶり!」
「……圭都っ」
「元気やった?」
白い歯を見せて笑う圭都に、私も笑って見せた。
「めっちゃ元気やった」
「……ほんとかね?」
「本当って!なんでいっつも疑うとよ」
「はは!うん、ごめん」
そして、もうお決まりになって来た会話に声を出して笑う。
……圭都と気まずくならなくてよかった。
圭都の人柄の良さは、クラスで一番だと思う。
だからこそ、好きになりたいと、一度でも思えたんやと思うし。
あの花火大会の日のことは、心の底から申し訳なかったと反省してる。
大きな音にびっくりしてパニックになって、それで……逃げ出した。
そのあとのことも。圭都には言ってないけど罪悪感はなんとなく出てきた。