涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。
〈2〉弱ムシな女の子
8年前、引っ越すことを聞かされた時、私は真っ先にレイのことが頭に浮かんだ。
レイと離れるのがイヤだってすごく思ったことを覚えている。
引越しの理由は、母が連れて来た知らない男の人と家族になるかららしい。
『お母さんね、この人と結婚するっちゃん』
『この人サクの新しいお父さんとよ〜っ!』
これ以上の幸せなんかないような顔で言って来た母にレイと離れるのがイヤだなんて、そんなこととてもじゃないけど言えなかった。
母の幸せを奪うような発言だと、幼いながらに思ったからだ。
……お父さんなんていらないのに。
実の父はまだ私がお母さんのお腹の中にいる頃に病気で他界。
意気消沈した母は生まれた私を連れて田舎暮らしをはじめた。
自然溢れるこの田舎で、傷ついた心を癒そうと思ったらしい。