涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。
「そんなんじゃ許さんし!」
「サクは意地悪やなぁ」
クスクス笑ったあと暗くなる顔を無理にまた笑顔にするように微笑むレイに胸がざわついた。
……レイ?
レイの笑顔、なんかぎこちないよ?
「……だめだよ。死ぬこと考えちゃ……」
「でも、俺、死ぬかもしれんやん」
左胸の辺りをぎゅっと握るレイ。
レイは生まれつき心臓が弱く、ずっと死と隣り合わせの日々を送って来た。
そして明日、大事な手術が行われる予定だと聞いている。
だから本当はこんなところにいちゃいけないし、病院にいるはずのレイがうちに「行くぞ、サク」と迎えに来たことにすごく驚いた。
……サクには手術のことはよくわからないけれど、レイがすごく怖がっているからサクも怖い。
「じゃあサクが死んだら……」
「サクだって死ぬこと考えるとうやん」
「……黙って。サクが死んだら太陽になるけん!」
「なんで?」
秘密って言うとレイは「はあ?ふざけんな」ってしつこく聞いて来たけど最後まで教えてあげなかった。
……君を明るく照らすためだよ。
なんて、とてもじゃないけど言えなかった。
その代わりに、私はレイの震える手に自分の手を重ねた。
言わなきゃいけないことも言わずに。
ただひたすら、レイの無事だけを祈って泣いた。
7才、私たちの、夏の思い出。