涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。
背筋が凍る感覚。
思い出したくもない記憶が刹那の間に蘇る。
「このチェーン外してくれん?」
「……帰って」
「いいやん。親子やろ?」
「違う、もう親子じゃないけん!迷惑やから帰ってよ!!」
目をつむって勢いよく怒鳴るとその人の血相が変わった。
その表情を見て、がたがた足が震えだす。
……怒らせたのは目に見えていた。
「ふざけんなよ!?4年間も食わせてやった恩を忘れたとか!?あん!?」
力任せにドアを激しく揺さぶるようにしているその人に言葉にならない恐怖を覚えて後ずさる。
お母さんがそんな私の肩に触れた。
そして二人で古くその力に耐えきれずにチェーンの根元が壊れた瞬間を見た。
……やばい。
「お前ら、わかっとるっちゃろーな?」
笑ったその人に諦めて瞳を閉じた。
次の日、ひどい顔をして学校に行った私にクラスの人たちがみんなして絶句していたのを覚えている。