涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。


「わっ!」


「きゃっ」



重なった声と、流れ出す気まずい空気。


放課後になっていつものように圭都と真理ちゃんと帰り道を歩いていた時、スマホを教室に置き忘れていたことを思い出して。



「取ってくるね!」



と、教室に急いでいると扉のところで急に目の前に飛び出して来たレイにぶつかりそうになった。


二人きりになったのはあの保健室の別れからはじめてで。

すごく気まずい空気が……。



「ごめん……」


「俺こそ」



教室に入ろうと右へ行くと、レイも右に。

次に左に行くと、レイも左に。


二人とも同じ方向に足を踏み出すから……もう、なんなの!



「サク、ストップ!」



レイが私の肩に触れた。


ドキンッ……。



「はい、どうぞ」



レイが私の肩を持ってそのまま教室に誘導してくれた。


……こんな小さなことにも、私の敏感な心は反応する。


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