涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。
触れられて、嬉しい。
名前を呼ばれて、嬉しい。
……会話ができて、嬉しい。
こんな些細なことが別れた今となってとても嬉しい。
「じゃあな」
レイが口の端を持ち上げて、私に背中を向けた。
その笑顔がいつもの感じとなんか違って見えて……。
いつもは太陽の木漏れ日のようにあたたかい笑顔を見せるのに、
今のは、なんだか暗くて、ムリしているように見て取れた。
苦しそうに見えたのは、気のせいなんかな……?
あっ……!
「待って……っ」
なんで声をかけたのは自分でもわからなかった。
でも、レイと話がしたいって思ったの。
「ちょっと話せんかいな……?」
だから、ほんの一握り、勇気を振り絞ってみた。
怖いけど、話したい。
こんなに大好きなレイとの終わりが、あんな形だなんて納得できない。
レイは目を見開くと「いいよ」と言ってくれた。