涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。
〈19〉君を愛しぬく事
「俺の心臓はみんなみたいにうまく血液を送ってくれとよ。理由もわかってないし。治療も、薬でなんとか心臓を動かしとるけど、完治には心臓移植しかないっちゃん」
その日の帰り道、レイはすべてを話してくれた。
「この世界にどれだけの心臓病の人がいて、どれだけの心臓移植が必要な人がいるかわかる?」
「わかんない……」
「実は俺も。やけど、みんな、世界中の人が待ってる。人が死ぬのを」
泣きたくなったけど、意地でも泣かなかった。
一番泣きたいのは、レイだもん。
「俺のこの心臓はもう使い物にならんから、他人が死んでからしか手に入らない心臓を待ってるんだよ」
残酷すぎる現実に、目をそむけたくなる。
レイが生きるために、だれかの命がいるだなんて、そんなの想像しただけで……残酷だ。
「本当、わけわかんねぇーよな。なんで俺なんやろ……?生まれた時からこうなることが決まっとったとか……可哀想すぎると思わん?」