涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。


リビングを通り抜けてキッチンに向かった私の様子を見て母が「サク?」と声をかけた。


引き出しからするどく尖った包丁を取り出した私を見て母が慌ててこちらに駆け寄る。



「やめなさい……っ、サク……!!」


「……っいやだ!!あいつ生きてる価値ないやんか!!やけん私が殺しちゃあって!!」



泣き叫ぶ私。
母の制御を振り切るように。


私がやらないと、終わらない。
私が終わらせる。こんな毎日。


終わらせたい。
こんな毎日がずっと、ずーーっと続くなんて耐えられない。


あいつのために一生を棒に振りたくない。



「いかん……っ。サクの人生に泥ば塗りたくなんかなか!!」



なんとか、私の手から包丁を奪い取った母が泣きながら微笑んだ。



「おか……さん……?」



な、に……。



「これはお母さんの役目たい」



なにを、言っているの?



「いい?咲夜。いい人に巡り会いんさい。お母さんはダメやったけど……」


「だめっ!お母さん……っダメ!」



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