涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。


告別式ではみんなが泣いていたのに、私だけは泣けなかった。


灰になったように、なんの感情も受けつけないの。


レイが死んだって事実が理解できなかった……。


みんなが泣いて、私だけが無表情で。

たえられなくなった私はその場を抜け出して、ひとりあの丘に向かった。



「レイ……」



ひとりになって、やっと、悲しみが押し寄せて来る。


思い出がたくさんあるこの丘でなら、レイのことを考えられる。


あんな人がたくさんいて、レイも、眠ったような穏やかな顔をしてて。


どうやったらみんなと同じように死んだことを認められるの……。


ここでなら悲しめる。



「レイ、苦しかった……?」



心臓発作で亡くなったレイは、最後、苦しみながら逝ってしまったの……?


近くにいてあげられなかったことが、本気で悔しいよ。


やっと楽になれたって思うのかな……。


それとも、苦しんでも、辛くても、まだ生きていたかったと思うの……?


ふいに空を見上げた。


君と出会った日と同じように、

君と再会した日と同じような、


綺麗な青空ーーーー。


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