涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。



切なそうに、私の名前を呼んだ。


来ているのは、まだ、私とレイだけのようだった。


……切ないのは私の胸か。


いろんな感情が湧いて出て、のどが痛い。
鼻の奥もツンとする。


愛しいのに、レイには他に好きな女の子がいる。
こんなに大好きなのに、レイにはあんなに可愛い彼女がいる。


そう思うと、たまらなく泣きそう。

やっと会えたというのに。


それが片想いの始まりだなんて。



「……隣にどうぞ」



ボーッと立ち尽くしていた私にかけてくれた優しい言葉。



「う、うん……」



遠慮がちに隣に座る。


こうしてみるとなんだか8年前のあの日を思い出す。

君と過ごした最後の日。


このベンチに座っても地面につかなかった足が当たり前だけど、地についていて、私より長いレイの足も前に伸びている。


たったそれだけのことだけど、時間の流れを感じる。



「この前は冷たい態度とってごめん」


「え?……ううん!全然っ」


「ずっと謝りたかったんやけどタイミングがなくて」



隣で眉を寄せるレイにドギマギしてしまう。

胸の音がドキドキうるさい……。


……気にして、くれとったんや。



「手術うまく行ったんやね……」


「……うん、まあね」



生きてて、こうしてまた会えて、良かったと、本当に思うよ。


最悪の場合が頭をよぎっていたことも、あるから。



「もうサクには会えんて思っとった」


「…………」


「やけん、また会えて本当に嬉しかった」



……え?


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