涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。
〈1〉君が理由でした
あの丘での思い出から8年が経って、
私は15才になった。
「卒業、おめでと〜っ!!」
中学校の卒業式が終わってからすぐ、まだみんな式の余韻に浸ってはしゃいでいるなか私は1ミリの未練も残すことなく学校をあとにした。
みんなで撮る写真とか、卒業アルバムへのメッセージとか。
……いっきに友達をなくした私には正直どうでもいいことだった。
綺麗な桜も、みんなの晴れ晴れとした表情も、先生や親たちのお祝いムードも、ドン底まで落ちた私には嫌味に感じたから。
卒業証書を握り締めて、もう二度と歩かないだろう通学路を一人で歩いた。
そして辿り着いた私が住む古くてボロいアパートの階段を登る。錆び切っていて、上がるたびに早くとり壊せばいいのにって思う。
もうこんなオンボロアパートに住みたい貧乏人もいないでしょ。
ふとその時、井戸端会議中の近所のおばちゃんたちが帰って来た私を見てコソコソと声をひそめたのに気づいた。
「ほら例の星野さんちのお嬢さんやけん」
「えっ、あの?」
「そうそう。両親が心中したって言っとった……」
進めていた足を止めておばさん達を睨みつける。