涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。
「俺の彼女になる気はなかと?」
「お、お断りします!!」
スルッと彼の腕から逃れると、左ひじをカウンターに起き、右手の指3本であごひげを触りながら「んー惜しいねー」ってニヤリと笑った。
それを聞いて鳥肌が立つ。
「ちょっと東野さん、サクばからかうんやめてくれません?」
そばにいたレイが私と彼の間に立つ。
そして目の前にいるチャラ男のことを東野さんと呼んだ。
「……なんやーレイ。別に俺からかってねーけん。いたって本気やけんね」
「本気のほうがいかんけん。東野さん、なん才やった?」
「27。まだまだイケるっしょ?」
「イケんけん。サクはおじさん興味ないけん」
目の前で繰り広げられる会話にまばたきを繰り返す。
……レイ、もしかして、助けてくれた?
「おじさんとは酷かねー。ね?サクちゃん」
「えっ、私?ええっと……」
「おーい!こっちこっち!」
先に席の方に行っていた真理ちゃんと圭都が私とレイを呼ぶ。
レイが先に行き、私は東野さんに頭を下げてから二人のもとへ向かった。