涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。
そんなの、私が聞きたいぐらいやし。
圭都がゆっくり歩き出したので私は一歩下がって着いて行く。
夕日に伸ばされたふたりの影を見ながら歩いた。
「麗矢と真理は付き合ってまだ日が浅いとよ」
「うん」
「ずっと真理の片想いで、やっと両想いになったけんね」
……そう、なんだ。
でも圭都はそれを話して、いったい私になんて言ってほしいんやろう?
……ううん、本当はわかってる。
邪魔するなって言いたいっちゃろ?
「私はただの久しぶりに再会した幼馴染やけん」
「…………」
「それ以上でも以下でもないけん心配せんで」
得意ではない笑顔をつくって見せた。
……明るくて元気で、それでいてバカそうな圭都は、きっと誰よりも人の心に敏感な人。周りをよく見ている。
……私の気持ちにも気づいてそうやもん。
もちろん邪魔はしない。
だけど、真理ちゃんに気を遣ってレイとわざと距離を取るのも違うって思う。
私は私やろうもん?
でもまぁ、どん底まで落ちた私の人生なんてきっとこんなもの。
好きな人には愛されず、
涙が溢れるほどの幸せを手に入れる間も無く、
私はただ流れる時間の中をただ息をして生きて行くんだーーー。