涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。
〈5〉こぼれる想いに
どんなに必死になって、空に手を伸ばしても、なにも得られないのに
なぜ人は空に手を伸ばすことをやめられないんだろう。
どうして手の届かないものだとわかっていても
この手に欲しいと、人は願ってしまうんだろう。
辛く悲しい毎日にサヨナラと言っても、刻んで来た君のいない日々は
……私を苦しめる。
『お前らは一生死ぬまで俺から解放されねぇーんだよ!!お前の母さんが死んだら咲夜、今度はお前だ』
ーーバッ!
嫌な夢を見て目が覚めた。
はぁはぁ…と荒くなった呼吸。
全身にはひんやりとした冷や汗。
時刻は夜中の3時。
ベッドから出て窓を開けた。
「サクは泣き虫やね……」
そっと、いつかの君がなりたいと願った月をゆびさした。
人差し指がさすピンポイントを見つめる。