涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。



同年代の子たちのキラキラした雰囲気を間近で感じて、自分の汚さが浮き彫りになっていくような、そんな感覚がするんだ。


春だけど、私の春に、色はない。
空のように、青くなる予感も、なにもない。



「行って来ますっ」



ローファーを履いて、4度目の通学路を歩く。


今日も田舎の空は一段と綺麗。
太陽は温かい光で私を照らし、風は若葉の匂いを運ぶ。


都会の空はすごく霞(かす)んでいたから余計にそう感じるのかもしれない。


やっぱりいつもレイと見上げていたここの空は別格だね。



「おはよっ、咲夜」


「……げ。圭都」


「げ、って失礼なやつやなぁ?はたくぞ?」



学校まであと少しのところで圭都が私の隣まで走って来た。


……なんとなく圭都は苦手。


圭都といると心の中を見透かされてるみたいで落ち着かない。

表情の動きひとつにも気をつかってしまう。



「叩いたらレイに言いつけるだけやし」


「……なんか今寒気した」



レイに「圭都にいじめられた」って言ったらすごく怒りそう。


……想像したら笑っちゃった。


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