涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。
『レイ?左胸おさえてどうしたん?』
『胸が…痛いっちゃん……』
あれは、小さい頃の発作の合図だった。
胸が痛むとレイは決まって右手の親指で左胸を押していた。
……でもなんで?
レイの病気は治ったんじゃないと?
そんなことを考えていた時だった。
「レイ…っ!!?」
傘を手放したレイがひざまずくように地に左手をついた。
右手は左胸を強く握っている。
それを見た私も手に持っていたバックと傘をその場に捨てて、考えるよりも先にレイのもとへ駆け出していた。
…レイ!レイ!
「レイ!?どうしたと!?大丈夫!?」
「さ…く……大丈…夫…やか…ら…」
片目を閉じて苦し紛れに笑うレイの身体を支えた。
……濡れたら身体が冷えちゃう。
混乱している頭を必死に動かす。
重たいレイの身体を必死に支えて、屋根のある昇降口のところまで頑張って歩いた。