涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。
〈8〉イロイロ恋模様
「へっくしゅん!!」
教室中に響くような大きなくしゃみをした私を、みんながびっくりしたように見る。
苦笑いをすると真理ちゃんが「大丈夫?」と声をかけてくれた。
「大丈夫。バカは風邪ひかんって言うやろ?」
「サクちゃん頭いいやん。真理、知っとるとよー?サクちゃんが実力テスト学年で1番やったことー」
たこみたいに口を尖らせる真理ちゃんに「アハハ」と笑う。
……ばれとったんや。
キーンコーンカーンコーン。
授業の始まりを告げるチャイム。
席に座って教科書とノートとペンケースを……って、あれ?
「……ない?」
手探りでペンケースを探すも見当たらず、イスを引いて引き出しを見たけど、やっぱりない。
またなくなっとる……。