涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。
〈8〉イロイロ恋模様


「へっくしゅん!!」



教室中に響くような大きなくしゃみをした私を、みんながびっくりしたように見る。


苦笑いをすると真理ちゃんが「大丈夫?」と声をかけてくれた。



「大丈夫。バカは風邪ひかんって言うやろ?」


「サクちゃん頭いいやん。真理、知っとるとよー?サクちゃんが実力テスト学年で1番やったことー」



たこみたいに口を尖らせる真理ちゃんに「アハハ」と笑う。


……ばれとったんや。


キーンコーンカーンコーン。


授業の始まりを告げるチャイム。


席に座って教科書とノートとペンケースを……って、あれ?



「……ない?」



手探りでペンケースを探すも見当たらず、イスを引いて引き出しを見たけど、やっぱりない。


またなくなっとる……。


< 89 / 259 >

この作品をシェア

pagetop