涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。


「叔父さんありがとう。それからお世話になります」


「なんや?改まって、気持ち悪い」



気持ち悪いって!!



「これから暇やろ?ここらへん探索して来たら?」


「……そーする」


「それから、あんまり思い詰めんなよ?」


「へ?」



叔父さんが優しい言葉をかけてくれた……?



「らしくないよ、叔父さん」


「うっせ!!」



でも、ありがとう。


不器用な叔父さんの優しさに見送られて、外に出た。


懐かしい記憶を辿るようにゆっくり、田んぼのあぜ道を通り抜ける。


私がこの町に来て真っ先に行きたいと思った場所。


誰も知らないような抜け道を通り抜けて、石畳の階段を上がったところに、


レイと最後に会ったあの丘がある。


木々に囲まれて自然に咲いた花と草原。


そこにある古びたベンチに座ってよくレイは空をゆびさしていた。


8年ぶりのそこは、8年経った今でもあまり変わっていない。


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