涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。
そうしている間にも授業は進む。
英語の長ったらしい例文を黒板に先生が書いている。
この先生は書くのが早くて、そして消すのが早いから、授業について行くのがやっとなのに。
……しかも新しい範囲やん。
書いとかな忘れる……
けど、書くものがないけん。
あ、消された。
「……サク?どうしたん?」
隣の席のレイが声をかけて来た。
はっと見るとキョトンとしたレイの表情。
「ごめん、シャーペン貸してくれん?」
「いいけど、どうしたん?」
「……家に忘れたみたい」
……うそ。
さっきの授業の時まではちゃんとあったもん。
なんで……?
体操着といい、ペンケースまで。
「ほら。使っていいよ」
……コソコソ話し声がくすぐったい。
黒色の、いかにも男の子に借りましたとでも言いたげなシャープペン。
「……ありがとう」
受け取る時、
指の先が少しだけ当たって
ドキドキした。