君の手を掴みとる
【2】

 雨が降っていた。
 足元がぬかるみ、足を動かす度に泥が跳ねる。
 姫と俺はびしょ濡れになって、姫の青基調としたドレスのレースは泥で汚れていた。

 抜刀していた剣は既に腰に戻していた。
 女一人無力化するのに、今の俺にとって必要ない。

 姫の左手を引っ張って走る。
 雨のせいか、あまり暖かさは感じられない。
 でも、柔らかい。
 あのとき以来だった。
 姫の手を握るのは。
 でも、あのときとは状況が違う。
 あのとき、姫は俺を救ってくれたのに、俺は今なにをしているんだろう。

 姫の息づかいが荒い。
 走るペースが速いんだ。
 いつもだったら、姫のペースに合わせて行くが、今は違った。
 黙々と目的地に向かって走り続ける。
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