君の手を掴みとる
「黙りかい。やれやれ。愛が憎しみを上回ったか。……なら、僕が殺すとしようか」

 そう言った瞬間、懐から短刀を取り出し、姫に向かって接近する。
 奴の短刀の軌道の目標は心臓だった。

 姫は動かない。
 動けない。

 僕は抜刀し、応戦しようとする。
 違う!
 それじゃあ、間に合わない。
 僕は咄嗟に姫と奴の間に身体を割り込ませる。

「ぐっ」

「ロスト!」

 腹が熱い。
 炎で焼かれているような痛み。
 その痛みに負けず、今度こそ抜刀し、構えをとる。

「はは。そこまでして、姫を護りたいのか。
うーん、手負いだとしても君が相手だと時間がかかり過ぎる、か。ここは一旦引くよ」
 
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