焔のものがたり
 その日は朝から暗い空が押し寄せ、真っ白な雪がちらちらと舞い降りていました。いつものようにマッチ箱に細工を施すローエンの手もかじかみいつもより幾分形が歪になってしまいます。やっとすべての細工が終わるころには、太陽は真上を過ぎていました。ローエンは二人の兄たちにお礼を言うと、必死に町へと急ぎました。
町に着くころには、雪はふわふわとした塊になって舞い降りてきていました。ねずみ色のポンチョのフードに降り積もった雪を振りはらい、ローエンは声を張りました。
「マッチはいりませんか」
 天候のせいか広場には人々の姿が少なく、行き交う人々もせわしなく通り過ぎていきます。誰もローエンには見向きもしてくれません。日が暮れる頃になってもマッチは半分も売れません。
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