焔のものがたり
 いつの間にか風は強くなり、雪は叩きつけるように吹雪き始めていました。ローエンは手を温めようと息を吐き出しましたが、それは気休め程度にしかなりませんでした。何か口に入れることができれば少しでも温まることができるのでしょうか。ローエンは壁にもたれかかり、その場に座り込みました。おいしそうなチキンの匂いが漂ってきます。楽しそうな談笑が聞こえてきます。
(ああ、そうか。今日はクリスマスだった)
ローエンは幸せそうな親子連れをぼんやりと眺めていました。無意識に落ちた手が籠に触れました。
(……家へ帰ろう)
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