焔のものがたり
 私は手に持った籠の中を探りました。探していた物はすぐに見つかりました、たくさんありましたから。それを手に取りました。凍えて動かない指先で箱を開けました。取り出した木の棒を箱に擦りつけます。指先が動かないせいで何本か折ってしまいました。ぱしゅっという軽い音と共に一点の光が灯りました。そうよこんな家、なくなってしまえばいいんだ。私はそう思い一点の光を手に一歩、またと一歩と家に近づきました。
 どうしてそんなにつらくあたるの? どうして実の娘に居候と同じだなんて言えるの? いらないなんて言えるの? そんなに私のことがきらいなの? それならいっそ私なんて生まなければよかったのに。あいつには人の心ってものがないの? ひどいよひどいよ。理不尽にも程があるわ。私のことは散々殴るくせに私が少しひっかいただけで怪我しただの生意気だの理由をつけてさらに殴ってくる。私が生きている意味ってあるの? なぜ私を生んだの? 実の父親さえ必要としてくれない私はどうして存在しているのかしら。あんなやつ死ねばいいのに。私なんか死ねばいいのに。あんなろくでなしにすらゴミみたいに扱われる私なんて死ねばいいのに。もう考えるのも嫌。みんな消えてしまえばいいのに! 燃えてしまえばいいのに……! 手のひらからこぼれた小さな灯は風にあおられ、辺りが一瞬真っ白になって――
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