可愛い娘には裏があった
 どうか、こいつダセーとか思わないで欲しい。
 だって、鬼の形相で、ずっと恨んでいた相手を見つけ出したような声で、問い詰められたんだぜ。
 そりゃあビビるよ。
 声も震えるよ。
 膝も笑うよ。
 でも、可愛いんだよなー。
 素晴らしく矛盾してるな。
 これは実際体験してみないと分からないと思う。
 怒りに狂った表情だが、可愛いのだ。
 
「ふん! さっさと言えばいいのよ。もし、あんたが本当に忘れてたらウジ虫並みの記憶力だと馬鹿にするとこだったわ。あ、でも、いったん忘れてたみたいだからウジ虫の一歩手前ね!」

 「あはははは」と、豪快に笑う天羽さん。
 あれ、俺のなかでは「うふふふ」とか天羽さんは優雅に笑うはずなんだが。
 ……今更か。
 
 それにしても、ひ、ひどい。
 ウジ虫並みだなんて。
 ウジ虫の記憶力が優れているのか、いないのか分からないけど。
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