可愛い娘には裏があった
 っと、どうやら始めるようだ。
 女の子が構えをとる。
 右腕を大きく引く。
 女の子の体がピタリと止まる。
 刹那の静寂。
 そして、次の瞬間には肩甲骨くらいまでのびている黒髪がゆれる。

「鬱陶しいんだよおおおおぉぉぉ!!」

 弓なりに右腕を突き出すと同時にいきなりの暴言をはく。
 その叫びはすごい鬼気迫るものだった。
 まるで親の敵に出会ったかのよな叫びである。

 その叫びは俺ら見物人に言われたものなのかは定かではない。
 もしかしたらなにか思いだして言ったのかもしれない。
 ああ、あのときの谷風は鬱陶しかったなー、とか。
 なーんて、言い訳はよそう。
 恐らく俺ら野次馬に言われたものだと俺は思う。
 こんな見られながらやるの嫌な人もいるしなー。
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