追伸,私は生きています。
ごとごとと音を立てる車内が、まるでゆりかごのように眠気を誘って目を閉じた。

まぶたの裏側に、
つい最近の出来事が鮮明に映し出される。













「お前なんて生まれなければよかった」

お前が生み出したくせに。
そう心でぼやきながらも、口は全く違う言葉を吐き出す。

「はい。申し訳ありませんでした」

そうして毎日こき使われて、
殴られるような毎日。
一般的ではないものの、虐待されている子供の枠内では平均的な虐待だといえようそれは、やはり子供が受けるには大きすぎた。
ある日あの男に命令されて酒を買おうとすると、
店員さんに引き止められて裏方へ通されたのだ。
そしてあれよあれよと警察がやってきて、事情を話すとあえなく父は御用となった。


私を産んですぐに事故で亡くなった母の妹、
いま私を乗せて走る車を運転している彼女がその人で。
唯一の血縁者として彼女、桜華さんに引き取られることとなった私は
母の形見の麦わら帽子と、たった一枚。
写真立てに入れられた母と赤ん坊の私を移した写真だけを持って家を出た。

着ている純白の可愛らしいワンピースは桜華さんからのプレゼント。
彼女はきっと、優しい人だろう、と
いつの間にかかけられた毛布を握って小さく私は微笑んだ。
< 2 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop