晴れ、時々、運命のいたずら
気が付けば来ていた。
千曲川にかかる千曲橋。
その袂に座る。
この場所が穂乃花の指定席。
穏やかに流れる千曲川を眺める。
(心が軽くなる気がする…。)
汚れた鞄からノートを取り出す。
『溢れる思いは、全て千曲川に流してしまいたい。』
『けれど、雄大な千曲川でも流せない本当の気持ち。』
頭に浮かぶのは稔への思いばかり…。
『君を思う気持ちが溢れるのは運命のいたずら?』
(運命のいたずら…。)
ノートを閉じ、呆然と川の流れを見つめる。
(千葉君の事が好きなのは私だけじゃないものね…。)
自分に言い聞かせる。
(愛姫さん…。)
名古屋で見た愛姫の笑顔。
(愛姫さん…、私をいつもの歌声で救ってくれますか…。)