晴れ、時々、運命のいたずら



「今日もお疲れ様でした。」



「お疲れ様でした。」



相変わらずの島根の表情を1つ変えない事務的な挨拶に答えて、それでも送ってくれた事に感謝を示す為、左折して見えなくなるまで見届けた後、オートロックのロビーに向かった。



「やれやれ、今日も終わった…。」



「愛姫ちゃ~ん!」



鞄から鍵を取り出し、オートロックを解除する直前だった。


ゆっくりと振り向くと、野球帽を被り、ニヤニヤしながら小太りの男性が汗をかきながら立っている。



(静岡…。)



半年前、名古屋でのデビューシングルのイベント。


最前列に陣取り、手製の大きな団扇を持って歌い踊っていた男性。


名古屋の後もShipのイベントには必ず最前列に陣取って、その都度、手製の団扇を持ってくる。


静岡太一郎(しずおかたいちろう)。


簡単にいえばオタクなShipの熱狂的なファン。



「どうして…。」



背筋が冷たい感覚に襲われる。



「やっと見つけたぁ~。愛姫ちゃんの家ずっと探していたんだよ~。」



「…。」


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