晴れ、時々、運命のいたずら



「僕はね、ずっとShipの応援しているんだよ。覚えてる?発売後の名古屋のイベント。実はね、その前の軽井沢の公開放送も見に行ってたんだよ~。僕はどこまでも愛姫ちゃんと香織ちゃんと一緒なんだから…。」



(軽井沢にも来ていたんだ…。)



デビューシングル発売前のラジオの公開放送はShip単独ではなかった為、気付いていなかった。


アイドルである以上、このような事が無いとは言い切れない。


ちょっとした事がすぐにネットに出されたり、突き止められたりする時代。


それは島根からはいつも言われている事だが、こうして初めて家まで来られると、今までに感じた事のない恐怖を覚える。


それでも、相手は一般人でありファンなのだ。


やはり愛想よく対応しなければならない。



「静岡さん、ここはプライベートなので遠慮してもらえますか?」



勇気を出してあくまでも優しく対応をする。



「静岡さんなんて、距離を置く言い方はしないでよ~。愛姫ちゃん、太一郎ちゃんでいいから~。」



どこまでもニヤニヤと近づいてくる。


一歩近づくにつれて一歩後ずさりする。



「お願いですから、今日は帰ってもらえますか?」



笑顔を見せながらも目で真剣に訴える。


さすがに困惑している事を察したのか、太一郎はまた来るね、と一言告げてから帰って行った。


完全に見えなくなった事を確かめると、すぐにオートロックの鍵を開けて、3階へ。


逃げるように家の中に入る。



「はぁ、はぁ…。」



体中の力が抜ける。



「気を付けなければ…。」


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