晴れ、時々、運命のいたずら
「福岡さん、調子はいかがですか?」
医師が看護師1人を引き連れて病室に入ってきた。
愛姫への思いを強く抱き続けた甲斐もあり、経過は良好で、入院してから2ヶ月後、一般病棟へ移る事が出来た。
「はい、お陰様で大丈夫です。」
「それは良かったです。」
医師がにっこりと微笑んだ。
「白血病と言うのは体中の血液細胞が減少しているので、ちょっとした細菌でも体の中に入らないようにほぼ隔離状態にしなければなりませんでしたが、抗がん剤投与の効果もあり、確実に完全寛解に近づいております。」
「それは…。」
「完治に向かっていると言う事です。」
「本当ですか?」
「ええ。ただ、ずっとベットで横になっている時間が長かった分、体の筋力はかなり衰えているはずです。退院してからの事を考えても、少しずつ体を動かす事をやって行きましょう。」
(退院…。)
その言葉がどれだけの嬉しさを運んできたのだろうか。
「もし体調が良ければ、一度、敷地内を散歩してはいかがでしょうか?」
「ありがとうございます。午後から少し外に出てみます。」
そう伝えた翔太の笑顔は輝いていた。