晴れ、時々、運命のいたずら
「そういえば兄さん、半年前の名古屋のイベントも来てくれてたよね?」
「ああ。」
「穂乃花ちゃんの後ろに隠れて気付かれない様に。」
「俺の前にいた女の子か。そうだな、気付かれない様にしてた。」
「どうして…。」
「ん?」
「どうして、はっきりと姿を現さなかったの?」
首を傾げて隼太を見つめる。
「有紗に生き別れの兄がいたってマイナスイメージにしかならないだろ。」
「それなら…。」
愛姫にとって一番の疑問。
「この前の静岡さんの時といい、今日の島根さんの時といい、どうしていつも私の危機に兄さんは現れるの?」
「それはな。」
隼太もコーヒーに口をつける。
「有紗を尾行しているからだよ。」
「尾行…。」
意味が分からない。
「有紗、父さんと母さんが離婚した理由、知ってるか?」
『今更こんな事聞いて悪いと思うけど…。どうしてお父さんと別れたの?』
一度だけ千夏に尋ねた事がある。
東京スカイツリーの中で。
はっきりと答えてくれなかった。
「父さんは、勤めていた会社が倒産したんだよ。」
淡々と話し出した。