晴れ、時々、運命のいたずら



「そういえば兄さん、半年前の名古屋のイベントも来てくれてたよね?」



「ああ。」



「穂乃花ちゃんの後ろに隠れて気付かれない様に。」



「俺の前にいた女の子か。そうだな、気付かれない様にしてた。」



「どうして…。」



「ん?」



「どうして、はっきりと姿を現さなかったの?」



首を傾げて隼太を見つめる。



「有紗に生き別れの兄がいたってマイナスイメージにしかならないだろ。」



「それなら…。」



愛姫にとって一番の疑問。



「この前の静岡さんの時といい、今日の島根さんの時といい、どうしていつも私の危機に兄さんは現れるの?」



「それはな。」



隼太もコーヒーに口をつける。



「有紗を尾行しているからだよ。」



「尾行…。」



意味が分からない。



「有紗、父さんと母さんが離婚した理由、知ってるか?」



『今更こんな事聞いて悪いと思うけど…。どうしてお父さんと別れたの?』



一度だけ千夏に尋ねた事がある。


東京スカイツリーの中で。


はっきりと答えてくれなかった。



「父さんは、勤めていた会社が倒産したんだよ。」



淡々と話し出した。


< 176 / 313 >

この作品をシェア

pagetop