晴れ、時々、運命のいたずら
「それで、父さんは一生懸命仕事探して、やっと隣の愛媛県で就職先が見つかった。」
「…。」
「けれど、その会社は労働条件が悪くて、賃金も安い。いくら働いてもお金が残らない。父さんは俺達に苦労を掛けないように敢えて籍を抜いたんだよ。」
「どうゆう事?」
「体を壊して働けなくなった。自分がいる事で母さんや俺達に苦労を掛けれないと思ったんだよ。」
「そんな…。」
父親の思いを初めて知った。
「離婚してもしなくても、徳島家は辛い苦労を送る事になったと思う。けれど、俺も有紗もこうして今生きているのは父さん、母さんのお陰。それは間違いない。」
真剣な眼差しで話す隼太に、愛姫もウンと軽く頷く。
「いつも明るく接してくれる母さん。本当に色々苦労して来たんだね…。」
千夏に対して申し訳なく思う。
そんな愛姫の思いを汲み取るように隼太は一度微笑んだ。
「それでも母さんは有紗がアイドルとして夢を掴もうとしている事が嬉しくて、生き甲斐を感じているんだよ。」
「兄さんは母さんに最近会ったの?」
「ああ、母さんが香川に帰る直前にな。」
「帰る直前…。」
「香川に帰る直前に、母さんに頼まれたんだよ。」
「何を?」
「有紗を見守って欲しい、助けて欲しいって。」
(全然知らなかった…。)