晴れ、時々、運命のいたずら
「島根さんはずっと感情を出さずに私達の事を一生懸命見守ってくれた。
それが今日、初めて感情を出してくれた。
島根さんは、ただ香織を愛していただけだと思う。
殺されそうになったのにこんな事言うの可笑しいかもしれないけど、人間らしい一面を見せてくれて何だか嬉しかった。
私1人で売れていく訳じゃないから、島根さんにはずっといて欲しいと思ってる。」
「そっか。」
納得していない表情の隼太に向かって愛姫は座り直して問いかけた。
「ねぇ、兄さん。」
「ん?」
「父さんは…?」
隼太も同じく座り直すと真っ直ぐに見つめて答えた。
「2年前に亡くなったよ。癌でね…。」
「癌…。」
小学生の時に会ったきりだったので父親の記憶があまり多くない。
けれど、亡くなった事を聞くと、自然と涙が溢れてきた。
(父さんに、テレビを通して私の姿見てもらいたかったな…。)
「父さんはちゃんと有紗の事見守っているよ。天国でな。」
隼太は慰めるように愛姫の頭を優しく撫でると、立ち上がって玄関に向かって歩き出した。
「兄さん。」
声に反応してくるりと振り返る。
「今度は…、しっかり兄として出て来てね。私、兄さんの事大好きだから!」
上目使いで頼んでくる愛姫に、隼太は親指を立てて微笑んだ。
「ああ、分かった。」