晴れ、時々、運命のいたずら



上野駅から長野新幹線で上田駅へ。


上田駅からしなの鉄道に乗り換えて、屋代駅に到着した。


長野県に来たのはデビュー前の軽井沢でのラジオ公開放送以来だ。


愛姫は、帽子を目深く被りマスクをして、屋代駅前からまっすぐに伸びる大通りをゆっくりと歩き始めた。


平屋の建物が立ち並んでいたが、駅から離れ始めると、田園も目立つようになってくる。


遠くに目を移すと、広大な山々が連なって見える。


やがて体育館を過ぎると、道路は緩やかに右手にカーブを始め、大きな川と橋が見えてきた。


確認すると千曲川、千曲橋を書いてある。


千曲川の水面がキラキラと太陽の光で輝いていた。



(土器川を思い出すな…。)



地元、香川県まんのう町に流れる土器川。



『苦しい時、辛い時があったら、このお守りを見て香川を思い出して。故郷は、裏切らないから…。』



(翔太…。)



千曲橋を渡り終え、電信柱に書いてある住所と持っているピンク色の封筒の住所を見比べる。



(この近くかな。)



大きな道を外れると、田園に囲まれた、2階建ての一軒家を見つけた。


表札には『宮崎』と書かれている。


< 199 / 313 >

この作品をシェア

pagetop