晴れ、時々、運命のいたずら



「何もありませんがどうぞ。」



畳の部屋に案内した後、その女性は一度姿を消し、お茶と和菓子をお盆に乗せてまた再び姿を現した。



「突然、お邪魔して申し訳ありません。」



愛姫が素直に頭を下げると、女性はニコニコと微笑んだ。



「穂乃花の祖母の宮崎益栄と申します。」



「東京で歌手をやっております富山愛姫と申します。」



「穂乃花がいつもあなたの歌声で励まされると言っておりますのよ。」



「ありがとうございます。穂乃花さんはデビュー前からファンレターを頂いておりまして、私こそ励まされております。ファンレターを頂いておりますので住所は分かっていたのですが、電話番号等は知らないもので、突然の訪問となってしまいました。申し訳ありません。」



「それはいいんですよ。こちらこそまだ帰っていないもので…。ところで…。」



益栄が少し不思議そうな顔をする。



「このような田舎に貴方のような人気者がどうして穂乃花を訪ねてきたのでしょう…。」



当然の質問であろう。



「実は私は2人で歌手活動をしていたのですが、この度、解散して1人で活動する事になりました。
ファンにはこちらから何もしない様に事務所から言われておりましたので、今まで穂乃花さんから手紙を貰っても何も出来ず申し訳ないとずっと思っておりました。
今回1人になった事を機に、せめて以前から応援してくれている穂乃花さんにだけはきちんとお礼を言いたいと思いまして…。」



「では、今日は…。」



「はい、事務所に黙って来ました。」



「まぁ、何て事…。」



少し唖然とした益栄だったが、すぐに嬉しそうな顔をして小さく呟いた。



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