晴れ、時々、運命のいたずら
揃って振り返り、美咲が苦々しい顔で穂乃花を睨みつける。
「宮崎さん、千葉君は今日で最後だから私と一緒に帰るの。何か御用?」
「わ、私…、これ…。」
穂乃花は美咲を無視して、先程机の下から取り出した一冊のノートを差し出した。
「これだけ、受け取って下さい!」
自分でも驚くほどの大きな声を出して頭を下げた。
「何、この汚いノート。千葉君、行きましょ。」
強引に肩を持って歩くように促す美咲の手を払いのけて、稔は穂乃花に近寄り、ノートを受け取った。
「ありがとう。」
頭を上げると、微笑みながら稔はノートを大事そうに胸元で抱えている。
「宮崎さん…、さようなら。」
その一言が心の中に沁みこんでいく。
(これでいいんだ。)
稔と美咲の後姿が小さくなっていく。
(こちらこそ、ありがとう…。)