晴れ、時々、運命のいたずら



島根は全く表情を出さずに事務的に仕事を取って来ては一緒に活動してくれた。


当初は合わないと思ったが、それでも信頼を置けるようにもなっていた。


ゴールドプロモーションのような小さな事務所はマネージャーも仕事を取ってこなければ簡単には集まっては来ない。


それが分かっているからこそ、典子のやり方は分からなくもないが、どこか違和感を感じていた。



「今の所、こんな感じなので。今日はオフなので、また明日から宜しくお願いしますね。」



典子はタブレットを閉じ、最後まで目を合わす事無くそのまま部屋を出て行った。



(はぁ。)



自然と深いため息が出てしまう。



(それでも頑張らなければ…。)



気合を入れ直す様に両手を天に突き上げるように高く上げると、ふとある事を思い付いた。



(もしかしたら、高崎のイベントがファンと間近に感じる事が出来る最後のチャンスかもしれない。)



そう思うと、自然と頭の中に翔太の顔が思い浮かんだ。


(翔太…。)



鞄からメモ用紙を取り出す。


穂乃花がくれた翔太の連絡先が書いてあるメモ用紙。



(最後のイベント、か。そろそろ私の前に姿を見せて欲しいな。)



香川県から群馬県。


簡単に来れる距離ではない事は愛姫自身よく分かっている。



(穂乃花ちゃんもきっと来てくれるだろうし…。)



携帯を取り出すと、メール画面を開く。



(もういいでしょ…。)



メールを作成し送信する。



(迎えに来てくれても…。)


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